switchを始める…
退屈は、不満がなくても始まる
50歳を過ぎてから、日々の時間が少しずつ平坦になってきた。
仕事はある。生活も大きくは変わらない。特別な不満があるわけでもない。
それでも、心があまり動いていない――そんな感覚だけが残っていた。
「暇」と言うほど余裕があるわけではない。
かといって「忙しい」と言えるほど刺激に満ちているわけでもない。
この中途半端な状態が、じわじわと退屈を生んでいる気がした。
そんなときに読んだのが
『暇と退屈の倫理学』 だった。
退屈とは、何もしないことではなく、
意味のある刺激が欠けている状態だという考え方に、強く頷いてしまった。
ああ、これが今の自分なのかもしれない、と。
懐かしさという「安全な入口」
「何か新しいことを始めたほうがいいのでは」
そう思っても、友だちと遊ぶ気力はあまり湧かない。
家から出るのも、予定を合わせるのも、正直なところ少し面倒だ。
そんなとき、
「オンラインゲームはどう?」
と勧められた。
最初は気が進まなかった。
オンラインと聞くだけで、人付き合いが面倒そうだと思ってしまう。
だが、名前を聞いた瞬間、記憶が一気に遡った。
ドラクエ。
ファミコン時代、ドラクエ1を初めてクリアしたときの感動。
あの音楽、あの達成感。
気がつけば、自分はドラクエと一緒に育ってきた世代だった。
ドラクエ10はオンラインゲームだが、調べてみると
「ほとんど一人でも遊べる」らしい。
それなら話は別だ。
まったく未知の世界に飛び込むのではなく、懐かしさを入り口にした“新しい体験”。
それなら、今の自分にもできそうな気がした。
Switchを買う、という小さくて大きな決断
ドラクエ10を遊ぶには、まずハードが必要になる。
Switchの価格を調べてみると、思ったより高かった。
最新機種は約5万円、ひとつ前のモデルでも3万円ほど。
「これはさすがに…」と一瞬ためらい、
次に考えたのが中古だった。
中古のSwitchは2万円前後。
性能に強いこだわりはない。
問題は状態だった。
少しでも傷があればランクB、
目立つ傷がなければランクA。
その差は約3,000円。
ネット購入の難しさは、
傷の場所や程度が実物を見ないと分からないことだ。
ここで、自分の性格をよく考えた。
「傷あり」と分かって買ったら、
きっとその傷を無意識に探してしまう。
ゲームをしていても、ふと気になってしまう。
逆に「傷なし」なら、
わざわざ探そうとはしないだろう。
後から付いた傷なら、それは自分のものだと納得できる。
この3,000円の差は、
性能の差ではなく、心の静かさの差だと思った。
実店舗を回ることも考えたが、
それ自体がもう億劫だった。
だからネットで、ランクAの中古Switchを買うことにした。
妥協ではない。
「迷わない環境」を選んだ、というだけだ。
新しい刺激は、人生を変えなくていい
50代からの新しいことは、
人生を大きく変える必要はないと思っている。
引っ越しもしない。
転職もしない。
大きな目標を掲げなくてもいい。
ただ、
昨日と少し違う時間をつくること。
Switchを注文した時点で、
もうその一歩は始まっていた。
ドラクエ10を始めて、
何がどう変わったのか。
それは、また別の話にしたい。
続く。